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デジタルツインを使用したリモート検査以外にも目を向けてみませんか

あまり注目されていなくても、それぞれの業界で画期的なソリューションを提供しているデジタルツインのユースケースをいくつか説明


IMARC Groupによると、世界のデジタルツイン市場の価値は2021年に103億米ドルとなり、CAGR(年平均成長率)31.7%で成長を続け、2027年に546億米ドルに達すると予測されており、元の市場規模の5倍以上に達すると考えられています。

当然のことながら、製品品質の向上、コストや時間、そしてリソースの効率化、部門や組織間のコラボレーションとワークフローの改善という点で、デジタルツインソリューションは企業にとってメリットがあります。デジタルツインの一般的なユースケースとして取り上げられているのは、IoTシステムとともに建設、製造、スマートシティ、さらには医療向けのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソリューションです。 

しかし、本記事においては、まだ注目されていないものの、各業界に変革をもたらす可能性のあるユースケースに焦点を当てたいと考えています。 

1. 解体

第一に、デジタルツインは形のある製品に関連付けがちです。しかし、デジタルツインの概念は構築環境にも適用されているのです。しかも、品質改善、コストとリスクの削減、時間の短縮、コラボレーションの相乗効果など、同じようなメリットが得られます。 

第二に、デジタルツインのユースケースとして建物がよく挙げられています。これは通常、建設プロジェクト、建物の運用と保守、不動産のマーケティングにおける文脈で語られます。しかし、実はデジタルツインは、土地の調査から、建設の進捗状況監視、建物の運用と保守の管理、そしてここで注目している建物の解体と再開発の段階まで、構築環境全体のライフサイクルに対応する強力なツールなのです。

建物の解体というのは思っている以上に複雑です。どれだけ建物の建設を慎重に計画しても、事故は発生します。解体プロセスでも同様ですが、ここでは爆発物の使用や、場合によっては使われる12,000ポンド(約5,400 kg)の鉄球は考えません。解体プロセスには、現場の検査、資材や構造の調査、作業者の安全対策、詳細な解体計画の作成など、解体作業以外のことも含まれます。デジタルツインを使用すれば、これらの作業を容易にして、文書化することもできます。 

この技術によって、解体の専門家による遠隔地の検査や、コラボレーションの円滑化、作業現場の安全対策の支援ができます。チームがデジタルツインを使用した場合、建設プロジェクトと同じように解体プロジェクトでも、初期の現場調査から、危険物、非耐力壁、窓、ドア、装飾などの除去、実際の解体にいたるまで、進捗状況を監視できます。

Demolition use case

2. 教育、トレーニング、安全

次に、デジタルツインを使用した職場の安全性向上についてご説明します。デジタルツインが建設の安全用に使用されていることはよく耳にしますが、ここで注目するのは物流・運輸業界です。ほとんどの人は驚くかもしれません。物流倉庫では多数の事故が発生しています。倉庫の従業員はしばしば、重い物を持ち上げたり、深夜の交替勤務に従事したりします。したがって、従業員は常に気を張っていなければならないという問題が発生します。重量のある大きな機器を扱うときは特にそうです。例えばフォークリフトを運転している従業員が、突然棚にぶつかって物をはじき出してしまうと、負傷や死亡事故を引き起こすおそれがあります。

デジタルツインは、安全対策を促進し、リスクや危険を管理するための効果的なソリューションとなります。安全のための手順、マニュアル、トレーニングビデオを倉庫のデジタルツインにアップロードしておけば、そこに情報があることが誰でもわかり、便利です。従業員は、安全に関する資料が必要になったときに、いつでも簡単に利用できます。OSHA(労働安全衛生庁)によれば、企業が災害防止プログラムを導入した場合、事故を最大60%削減することができます。 

さらに、デジタルツインやセンサー技術を使用して、定期的な現場の検査の代わりに倉庫を常時リモートで監視し、安全に関する手順や規制が遵守されていることを徹底できます。建設業界では、リスクと危険を特定し、予防的に管理するためのAIソリューションがすでに開発されています。このようなソリューションが倉庫など他の業界に応用されるようになるまでには、おそらくそうかからないでしょう。

3. 保険

保険業界でデジタルツインが重要な役割を果たす主な分野は、保険の引受と請求の2つです。 

まず、業務用でも住宅でも不動産を評価する場合には、保険引受業者がその不動産を訪問して、建物と施設の構造や状態、立地、地形、道路のインフラ、近隣の物件などの特徴を評価する必要があります。現場を訪問して資産の徹底的な調査を行わずに、必要とされる補償金額に相当する再調達価額を見積もることは困難です。 

デジタルツインを使用すると、建物とその周囲を忠実に再現した仮想レプリカを作成し、所有者、保険引受業者、保険会社などの関係者全員と共有できます。AIソリューションを適用して、水場、基地局、送電線、プール、歩道のひび割れ、樹木の張り出しなど、リスクに晒されることになる特徴がないかをスキャンできます。全般的に、デジタルツインがあれば、双方に利益をもたらす可能性がある不動産について、より正確かつ透明性の高い評価ができるようになります。 

火災、爆発、盗難、暴風雨、その他の自然災害が発生した際の損害について保険金を請求する場合、保険契約者と保険引受業者の双方が、広さ、修理または交換の要件、実際の損害額を文書化するためにデジタルツインを使用できます。専門の保険損害査定人は、損害を受けた不動産の詳細な検査をデジタルツインで簡単に実施でき、現地に行く必要はありません。不動産のデジタルツインは、事故が発生するでも、そこに所在する物的資産とその状態を説明するための基礎となります。

insurance use case 3

4. 犯罪現場の捜査

最後のユースケースは、犯罪現場の捜査です。あまり話題にはのぼりませんが、デジタルツインのメリットは確実にあります。通常のワークフローがどういったものか考えてみましょう。警察や捜査官が犯罪現場に到着したら、その場所の初期調査を実施し、証拠になる可能性があると思われるあらゆるものの写真を撮影する必要があります。さまざまな種類の物的証拠を文書化して収集した後、各証拠に関するデータをインベントリに記録し、犯罪現場の報告書と照合し、該当する写真付きの資料に添付する必要があります。 

デジタルツインを作成して犯罪現場をキャプチャすると、捜査がより迅速かつ正確そして有益なものになります。警察は現場をそのまま保存できます。ツインは後で参照でき、便利です。さらにツインを鑑識チームと共有し、裁判所に提示することができます。それぞれの証拠のタグをデジタルツイン内の発見場所にあたるところに付けて、捜査官に空間的コンテキストを提供できます。捜査官は、詳細な写真やビデオ、結果の検査報告書、メンバーへのコメントをデジタルツインに直接アップロードできます。究極の付箋だと思ってください!   

警察は透明性を保って説明責任を果たすために、異なる時点でデジタルツインを複数作成し、捜査中に現場に何らかの改ざんが行われたかどうかを確認することもできます。

まとめ

現在、リモートサイトの検査、監視、シミュレーションのいずれの目的でも、デジタルツインを使用している企業の数は増加し続けています。しかし、デジタルツインには、さらに成長し、AEC、製造、エネルギー、公益事業以外の業界をも変革するポテンシャルを秘めています。本記事を参考になさり、新しく革新的な方法でデジタルツインを貴社やその業界で活用するためのアイデアが得られれば幸いです。

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